琵琶湖に来なければ見つけられない特別な食材があります。びわ湖固有種を中心にした食文化が今も受け継がれています。ビワマス・ニゴロブナ・コアユ・スジエビ・イサザ・ウロリ・ハス・モロコの琵琶湖の個性を表す8種の魚介類を「琵琶湖八珍」と呼び、古くから地元の方々に愛され、食されてきました。そんな貴重な食材と、日本三大和牛のひとつ、「近江牛」のすき焼きという、まさに近江の国の恵みを堪能できるお食事を、日帰りのご昼食でご用意致しました。量より質、さらに琵琶湖独特の食文化に触れてみてください。
琵琶湖にしか生息していない魚介類を「琵琶湖固有種」と呼び、琵琶鱒もその一つです。体長は30~60cm、体重は300g~2kg。 琵琶湖に注ぐ河川で産卵・ふ化した後、稚魚は琵琶湖へ下って成長し、2~3年で成魚となり、再び生まれた川へ戻って産卵します。琵琶湖沖合の深みに生息し、コアユやエビ類を食べています。コアユを多く食べる個体の身は脂が乗って色が薄くなり、エビ類を多く食べているものは朱色が濃くなります。主な漁期は6月~9月で、この頃に脂が乗って旬を迎え、上質な脂が全身に乗り、その味わいはトロにも負けないほど美味です。
地元では刺身はもちろんの事、塩焼き、煮付け、棒寿司、ムニエルなど、和洋問わず幅広く調理されています。また、秋の産卵前のビワマスは「アメノウオ(アメノイオ)」と呼ばれ、これを炊き込んだアメノイオご飯は滋賀県の無形民俗文化財に選定されている郷土料理です。
ホンモロコも琵琶湖の固有種の一つ。体長7~15cm、体重4~20g コイ科の魚類では最もおいしいと言われ、特に春先に獲れるホンモロコは子持ちであるため、人気が高い。一方、夏から秋頃の時期には、沿岸から沖合へ向かって移動するホンモロコが刺網などで漁獲されます。この秋に獲れるホンモロコは非常に脂が乗っていて、七輪などで焼く脂が炭に落ちて火が付くほどです。頭の部分をカリッと焼くため、頭を網の目に突き刺して焼くのが通の食べ方で、シンプルに塩で食べたり、酢味噌や生姜醤油、湖東地域では酢の中におろし生姜を入れた「生姜酢」で食べることもあります。その他にも天麩羅や南蛮漬け、佃煮、なれ寿司など様々な料理で食べられている。また、京都の高級料亭などでも珍重されている、琵琶湖を代表する高級魚です。
「ニゴロブナ(似五郎鮒)」の名前の由来は「ゲンゴロウブナ(源五郎鮒)」に姿が似ているからと言われています。琵琶湖の固有で体長20~40cm、体重200~500g。昔は今の水田のように整備された水田ではなく、梅雨時などの大雨では水田も川も一面になり、そこに遡上した鮒が水田の中で産卵していたそうです。 滋賀県を代表する発酵食品「鮒寿司」の原料として利用されており、卵を抱えたメスが重宝されていますが、オスの身は旨味が多く、刺身や煮付けに向いています。その他にも、洗いにして鮒の卵をまぶした「鮒の子付け」や、小型の鮒を三枚おろしにして皮ごと細く切り生のまま食べる「ジョキ」なども有名です。
鮒寿司の歴史は古く、平安時代の書物などにも記述があります。また、夏の土用の頃に漬け込まれた鮒寿司が食べられるようになるのが早ければ年末であり、お正月に樽を開けてお客さまのおもてなしをしたことからハレの日の料理となりました。
琵琶湖の固有種。体長3~8cm、体重1~4g。 琵琶湖北部の沖合に生息するハゼの仲間です。非常に出汁がでる魚で、濃い味付けにも負けない強い旨味が特徴です。大型のものは頭の骨が硬い場合がありますが、揚げ物などに調理すると骨を気にせず食べることができます。鮮度のよいイサザを「じゅんじゅん」と呼ばれるすき焼き風卵とじ鍋にすれば、ホクホクとした柔らかい身と旨味の強さがより一層引き立ちます。(じゅんじゅんの語源は、具材を鍋で煮る時の音が「じゅんじゅん」と聞こえた事からその名前が付けられたそうです)
資源量の年変動が大きく、多く獲れる年と非常に少ない年があり、幻の魚とまで言われました。琵琶湖は、竹生島の南あたりで深くなっていますが、イサザの漁場もそのあたり。旬の冬は突風が吹き、湖にも関わらず頭の辺りまで波が来ることもあるそうです。その為、猟師さんは雲の形や風向きなどを見極めながら漁をされているそうです。
ビワヨシノボリは淡水性のハゼの仲間で、琵琶湖とその流入河川だけに自然分布し、琵琶湖の固有種とされています。体長1~3cm、体重1g以下。吸盤状をの腹ビレがあり、その腹ビレを使って「葦(ヨシ)」のも登るという意味が名前の由来とされていますが、実際はヨシに登ることは無いそうです。
琵琶湖では初夏、日が昇ってから水深水深5~6mくらいの砂地で沖曳網(底曳網)と呼ばれる漁法で体長1cmほどの稚魚がとれます。この稚魚の事をウロリと呼び、一般に河川で獲れるゴリとは別に扱われています。初夏から初秋にかけてが旬のウロリはしょう油と砂糖で甘辛く炊いた佃煮がポピュラーですが、獲れて直ぐのものを釜揚げにし、ポン酢をサッとかけて食べるとほんのりとした甘みが楽しめます。また、卵とじなどにもされるが、とれたてでないと出来ない、贅沢な逸品です。
体長10cm前後で体重はおよそ5~20g。 コアユと聞くと「子鮎」、つまり鮎の稚魚を想像されるかもしれませんが、琵琶湖のコアユは「小鮎」と書き、体長10cmでも立派な大人なのです。春に成長の良いものが河川へ遡上しますが、大部分の個体は琵琶湖で成長し、小型のまま成魚となります。不思議なことに、この小鮎を川などに放流すると、普段見慣れた大きさの鮎に成長するそうです。冬季に獲れる稚魚は、ウロコが生えそろわず透き通った体をしているため氷魚(ひうお)と呼ばれています。冬の僅かな時期にしか獲れない氷魚をさっと塩ゆでにした釜揚げは琵琶湖ならではの贅沢な味覚です。2017年は近年まれに見る不漁となり、漁獲量は例年の10分の1とも言われ、貴重な食材となってしまいました。とれたてのものを天麩羅にしたり佃煮にすれば、清々しい香りとほろ苦さが口いっぱいに広がります。
体長2~4cm、体重1~2g。 主に琵琶湖北部の沖合で沖曳網(底曳網)によって漁獲されます。夏に沖曳網が禁漁となる時期には、「エビタツベ」と言われるカゴで漁獲することもあります。生きている時は透き通った飴色をしていますが、熱を加えて調理するとエビらしい赤色になります。スジエビの食べ方と言えば、「えび豆」。日本人が大好きなエビと大豆を、砂糖・しょう油・酒・みりんで炊き合わせた滋賀県を代表する郷土料理で、広く親しまれている一品。「えび豆」は大豆の栄養と、殻までまるごと食べられるスジエビのカルシウムも摂ることができる、栄養のバランスもよい一品。また、"エビ"のように腰が曲がるまで"マメ"に暮らせるようにとの願いをこめ、ハレの日にも食べられる大変縁起の良い料理です。
体長10~30cm、体重5~500g。 体長10cm程度の小型のものはハスゴと呼ばれています。コイ科の中では珍しく魚食性の強い性質を持ち、琵琶湖では主にコアユを捕食しています。元々は琵琶湖や淀川水系、三方五湖にしかいない魚でしたが、小鮎などを全国に放流する際にハスも混ざってしまい、現在では多くの河川や湖沼で生息しています。湖東地域では夏に獲れる大型のハスを塩焼きにしたものが好まれていて、肉食の魚であるものの、その身は柔らかく、淡白で上品な味わいです。一般的には地元でしかあまり消費されないので、その意味では貴重な琵琶湖の味覚とも言えます。