クマってこんな生き物です! ~ 自然が好きな人必見!!
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スタッフ名:高梨
最近、全国で熊の被害が増えています。これを機会に自然ガイドの立場として、クマとはどんな生き物か、どんな注意が必要かをお話ししたいと思います。
クマに対する情報は常々誇大に報道されることが多く、実態とかけ離れた認識を持つ日本人が相変わらず多いからです。
なおここでのクマとは、本州・四国に住むツキノワグマ(成獣で体重50~150㎏)に限定してお話します。北海道に住むヒグマ(成獣で体重80~500㎏)は除外します。
1、クマの体
簡単に言ってクマの体格は、成人男性とほぼ同じです。人間と同様後ろ足で直立することもあります。走るときは四足ですので二足の人間よりはるかに速く走れます。木登りは大の得意、水泳も得意で裏磐梯の湖で数百m沖の島に渡ることもあります。耳と鼻は犬以上に鋭敏です。
2、クマの習性・生活
当然のことですが野生動物のクマは、衣・食・住のすべてを自らやりくりし自然の中で生きています。人間は、コンビニやスーパーがないと不便だ、生きられないと言ったりしますが、クマはもちろん平気です。丈夫な骨格と筋肉、艶やかな分厚い毛皮をまとい、自然の中で食料を見つけ、風雨をものともせず毎日野宿します。しかも、群れをつくらず単独で行動し自力で生きる動物です。トラブルを常に避けながら生きている平和主義者でもあります。
(⇩)クマの体(剥製)
(⇩⇩)クマの毛皮(分厚く、つやつやです!)
熊の糞の画像も出てきます。お食事中の方閲覧ご注意ください。
3、クマの食べ物
クマの日常行動のほとんどは、飢え死にしないための食餌行動です。何が食べられるのか、どこに食べ物があるかのためにほぼ四六時中行動しています。
生きていくための栄養ある食物は、人間や他の動物と同様、ほかの植物や動物の体です。動物の体を得るには、それを捕まえる又は遺体を得なければなりません。本州や四国の場合、生態学上、確実にあてにできるほかの動物の体は少ないです。それで肉食動物の体の仕組み(特に歯と消化器官)を持つクマでも、植物食を主体とするのが確実な生き方となるのです。
つまりクマは、主に植物を食べて生きているのです。(パンダはさらに極端ですね。)
(⇩)クマのふん見つけた!(チャンス!)
ふんを分析すると何を食べているのかが調べられます!
まず、ビニール袋に手を入れ、ふんをふくろで掴み、裏返しにします。
ざるにあけると、固形物が分かります。ほとんど植物の茎でした!
この時期は、アザミの茎やハナウドの茎が食べられているのが見つかります。
さらには次のような、各季節特有の恵みを利用するのがクマの食生活です。
春 ~ 毒がなく栄養があって消化しやすい植物の若芽は、人間は山菜として盛んに食べますが、 クマにとっても同じです。大食漢なのでより食べ応えのあるハナウド、アザミなどの大型の草本、ヒメザゼンソウの根、ミズバショウの葉、根曲がりダケ、それにコブシの花なども食べます。雪の 下にあった昨年のドングリの残りなども口にするようです。
初夏 ~ 有りがたいことに6月下旬頃になると、オオヤマザクラの実(サクランボ)、ヤマグワの実(桑の実)、ウワミズザクラの実などが実り、栄養価の高い甘味に飢えていたクマは待ってました!とばかりに食べます。
さくらんぼの種(オオヤマザクラ)が見られるクマのふん
桑の実が見られるクマのふん(あまり消化していません)
夏 ~初夏の実りも終わり、山菜も成長して固くなり食用に適さなくなると、夏の一時期、食物の乏しい季節となるようです。こんな時期は、ハチやアリの巣を壊して、はちみつやハチの幼虫、アリの幼虫・成虫など動物食(昆虫食)が見られるようになり、食性が広がります。
秋 ~ 9月中旬になると、コクワ(サルナシ)、アケビ、ヤマブドウなどつる植物の秋の実りの本番になり、ようやく飢えから遠ざかることができます。それらを食べ尽くすと、こんどは、クリ、ドングリ、ブナの実などが大量に実り、約5か月間の絶食(冬ごもり)に備えられるようになります。
クマの食性にはかなりの偏った好みがあるようです。前年あれほどアザミを食べたのに今年はヒメザゼンソウばかり、ミズバショウばかり、と年により(個体により?!)食性が変わることがよく見られます。
バンガローの内壁に巣食ったキイロスズメバチの巣を取るために、このようなことを工具も使わずにやってしまうのです。
4、クマの武器
丸腰のままで野生のクマと運悪くばったり遭遇すると、人には何も武器がないのに気づきます。しかし熊には手ごわい武器があります。前肢の爪と歯です。人間でいう13~18歳くらいの亜成獣でも、殺傷能力はもう備えており、人間にとっていかにばったり遭遇しないかが重要になります。
歯も太いです。奥歯は臼状で植物食への適応が見られます。(ともに剥製)
5、注意すべきこと
① イエローゾーン・レッドゾーンがある
クマが人に近づいたとき、そこにはイエローゾーンとレッドゾーンがあります。イエローゾーンとは、人間を認知しても警戒や威嚇をするのみのゾーンで、クマとしても「人よ遠ざかってほしい」と願っています。そんな時は、怖がらずに目線はそらさずに少しづつ距離を拡げます。レッドゾーンは、「これはまずい!接触は避けられない、ならば先制攻撃!」と向かってくる可能性が大きいゾーンで、だいだい10m以内の距離のときです。いずれの場合でも、人がクマに背中を向けて逃げるのは、戦わずして「私はあなたより弱いです」と宣言するようなもので、クマに限らず野生動物は本能的に追いかけることが多いです。
② 嵐の時、川や滝の音の大きいところ等は要注意
遠くからクマに人の存在を知らせる意味で「クマ鈴」は有効ですが、これが効かない場合もあるということです。うっかりするとレッドゾーンでの遭遇となりかねません。クマも人も、相手の気配は、主に耳と鼻で感じるものです。その他、視界の利かない尾根向こうや物陰に近づくときも注意は必要です。条件の悪いときは一層注意力を働かせる、活動を中止する、も必要な判断です。
「クマ鈴」の音で逆にクマが近寄ってきた、という例もなくはないですが、極めて特殊な例です。原則通り、クマに人の存在を知らせる方が安全と言えます。まして裏磐梯の大地の特性から人慣れしていないクマが多いため、クマ鈴は有効です。
③ 親子連れは特に注意 中型犬以下のサイズは仔熊であり回りに親熊がいる
親子連れと言っても、親子が常にぴったりとくっついて行動しているとは限りません。意外に子供そっちのけで親熊が食事に専念という場面もあります。仔熊は親熊に付かず離れず親を真似て行動し生きるすべを学ぶのです。大切なのは、中型犬以下のサイズのクマを見たら、近くに親熊がいる、と警戒し、その場から遠ざかることです。運悪く離れている親と仔の中間に入ってしまい親熊に襲われる例は事故の中ではかなり多いようで、最近あった裏磐梯でのツキノワグマによる人身被害(幸い軽傷で命に別状はありませんでした)もそのような例でした。
また、親離れした亜成獣の若クマでも、小さいクマだといって侮ってしまわないことです。こうしたクマの方が、生態系の中で人間社会に近い条件の悪いところで生活することが多く、かつ好奇心は旺盛なので人の方に向かってくる例もあるからです。
④ クマが離れたくない場所(寝床、冬ごもり穴、エサの多い所)に近づいた時も注意
ふつうクマに人が近づいたときはクマの方が逃げるものですが、その場からクマが離れたくない場合もあります。一夜の寝床と決めて寝ている所や、特別おいしい食べ物が多くあるのでその場をクマが離れたくない場合等です。人がイエローゾーンに入っても緊張しつつじっと気配をかくしているのですが、いよいよレッドゾーンに来ると緊張が極大に達しいきなり出てくる!という場合です。その場の状況を人が注意深く観察する、気配を感知する等が必要になります。でもこれはめったにないことです。場所と時期・時間を考えて行動する、ということでしょうか。
⑤ 戦わなければならない時は勇敢に 犬連れは要注意
レッドゾーン内で人とクマが接触を避けられないような場合は、あればクマスプレー、または黒いジャンプ傘をクマの眼前で急に開く、などで対応します。これができない場合は、防御するしかありません。クマが狙ってくる顔面や頭部、さらには延髄あたりを両手で守り地面に伏せます。死んだふりはクマのなすがままになり、あまり意味がありません。
また犬連れの場合、クマの発見は早くなると思いますが、レッドゾーン内だと、勇敢に吠える犬でなくその脇でおろおろしている人の方にクマが攻撃を向けることはかなりあるようです。人も犬と同様な行動ができるといいのですが。
木登りは得意中の得意! この木、上まで爪痕だらけです。
この爪痕は、登りの時のやつ。しっかり食い込んでいます。
6、裏磐梯のクマ
休暇村裏磐梯のある裏磐梯の平地・湖沼群周辺は、明治の磐梯山爆発による岩なだれが分厚く堆積した岩だらけの大地です。今は植物が繁茂して岩は見えなくなっていますが、畑にも田んぼにも宅地にもならない役立たずの大地として噴火後ずうっと放っておかれてきました。肥沃な土の畑が広がっていればその作物をあてにする人慣れしたクマができてしまいますが、裏磐梯は噴火のおかげで畑がほとんどつくれません。人慣れした悪いクマが少ないのです。
さらに噴火後しばらく一本の草木もない極めて日当たりのよい大地だったため、そのような環境下で大繁栄する、ヤマブドウ、アケビ、コクワなどのつる植物が大群落をつくり、今でもこうしたつる植物の多い森となっています。クマにとって野生のおいしい食べ物の多い魅力的な大地となっているのです。ゆえに裏磐梯のクマは、野生動物本来の、用心深い、慎重な行動をするクマが多いのです。
裏磐梯の大地は、すべて磐梯山の噴火でできた特殊な自然が広がっていて、多くの野生生物が平和に生活できる魅力的な自然になっている、といえます。
ただ、クマは生態系の頂点に君臨するたくましい野生動物のため生きるための武器も有しており、人間の不用意さからの事故もありますし、クマの個体数の増加や人間による自然のオーバーユース(過剰利用)がトラブルの原因になることも考えられ、国立公園としての適正利用が期待されるところであります。
以上、主に過去の事故例をもとにしたクマへの対応を述べましたが、いずれも非常事態での話です。
クマがトラブルの起きぬよう用心して慎重な行動で平和主義を貫くように、われわれ人間もまたトラブルの起きぬよう用心深い慎重な行動をすることです。このようなクマが長生きして大きなクマに成長し気高い野生動物となるのです。生態系の頂点に君臨するものは、やはりそれなりの雄々しく逞しい美しさをもつ生物であります。
このような野生動物が一定数生息する裏磐梯という大地は、クマの存在も自然の魅力の一つと言えます。人間社会の中での生活に慣れきっている人間にはいささか緊張も伴う自然とのふれあいとなりますが、われわれの内なる野生にも少し目覚め、本来の自然の姿の魅力を心から楽しんでください。
それが裏磐梯の自然の楽しみ方のひとつとも言えます。