ブログ

2021.04.16

ヘルマン・ヘッセ『霧の中で』

4,273 view

スタッフ名:上村 直哉

Hermann Hesse (1877-1962)
„Im Nebel“
Auf Japanisch Übersetzung bei Naoya Uemura
 
ヘルマン・ヘッセ(1877-1962)
『霧の中にて』
日本語訳:上村直哉

写真:レンゲ沼探勝路にて
画像1
Seltsam, im Nebel zu wandern!
Einsam ist jeder Busch und Stein,
Kein Baum sieht den andern,
Jeder ist allein.
 
奇妙だ、霧の中をさすらうことは!
どの草木も石も、それぞれ孤独に佇み、
どの樹も他のものに見向きもしない。
皆それぞれ独りぼっちだ。
画像1
画像2
Voll von Freunden war mir die Welt,
Als noch mein Leben licht war;
Nun, da der Nebel fällt,
Ist keiner mehr sichtbar.
 
私の人生がまだ光で照らされていたとき、
私にとって世界は友に満ち溢れていた;
今や、霧が降りてしまい、
もはや何も見ることが出来ぬ。
画像1
画像2
Wahrlich, keiner ist weise,
Der nicht das Dunkel kennt,
Das unentrinnbar und leise
Von allen ihn trennt.
 
誠に、暗闇を知らぬ者は、賢くないのだ、
暗闇は、避けることができず、
しずかに、その者をあらゆるものから隔絶してしまう。
画像1
Seltsam, im Nebel zu wandern!
Leben ist Einsamsein.
Kein Mensch kennt den andern,
Jeder ist allein.
 
奇妙だ、霧の中をさすらうことは!
人生とは孤独なものだ。
どの人も他者を知らぬ。
誰もが、それぞれ独りぼっちなのだ。
これは、南ドイツ、ヴュルテムベルク地方出身の作家、ヘルマン・ヘッセの詩の中でも特に有名な『霧の中にて』という作品です。

この日の裏磐梯は濃霧で、一寸先も見えないほどでした。濃霧に包まれたレンゲ沼の探勝路は、このヘッセの詩を思い出させてくれるほどの詩情があります。

繰り返し『einsam:孤独な』や『allein:1人で』といった言葉が繰り返されますが、これは決して後ろ向きな意味で用いられていないと私は思います。ヘッセは、『幸福や救いの道は、他者や書物からは与えられず、自らの内部にしかない』という哲学の持ち主でした。

1人で探勝路を歩くことによって、初めて自分自身が、樹木や鳥、岩石などと等しく自然の中の一つなのだと悟ったり、自分自身の内面とじっくり向き合うことができたりします。裏磐梯の探勝路は多くを語りませんが、そこには人の心を原点の状態に戻してくれる不思議な力があるように思えるのです。

スタッフ

Staff blog

Archive

2026年(115)
2025年(241)
2024年(216)
2023年(362)
2022年(355)
2021年(365)
2020年(355)
2019年(364)
2018年(369)
2017年(186)
PAGE TOP