今回は、2026年7月3日から9月30日の間で運行されている、「WEST EXPRESS 銀河」の紀南ルートについて、乗車する機会が得られたので全区間である京都新宮間の乗車記録を紹介したいと思います。
「WEST EXPRESS 銀河」とは、JR西日本が観光を中心として西日本各エリアの活性化に貢献することを目的に運行している特急列車で、駅や車内における特産品の販売や伝統芸能披露などの各種おもてなしを実施しながら、関西と山陽、山陰、紀南を結んでいる列車です。
列車名の「銀河」とは、広い宇宙に存在する様々な星の集まりを指しており、この列車が運転する西日本エリアを宇宙に、各地の魅力的な地域を星になぞらえ、それらの地域を結ぶ列車という意味が込められています。
紀南ルートでは、下り(新宮行)は京都、新大阪、大阪駅を夜に発車し、翌朝串本、古座、太地、紀伊勝浦、新宮駅に到着する夜行列車が運行されており、上り(京都行き)は、新宮、紀伊勝浦、太地、古座、串本などに停車しながら大阪方面、京都駅へ向かう昼行列車が運行されています。
この列車の切符は一般的な特急と同様に、駅のみどりの窓口・券売機や、JR西日本の予約サイト「e5489」などで乗車日1ヶ月前の10時から購入可能ですが、とても人気の列車の為発売直後に売り切れになることも多い列車となっています。
私も今年度の運行初日から事前申し込みや定期的にキャンセルが出ていないかを確認していましたが、なかなか切符を取る事ができず、8月に入って直前にキャンセルが出た日があり乗車することができました。
車両について
「WEST EXPRESS 銀河」で使用されている車両は、もともと京阪神エリアで新快速用の車両として、1980年に製造された117系という形式で、改造される直前は湖西線などで緑色の塗装で運行されていました。
改造により雰囲気は全く違う車両になっていますが、前面の形状など所々に種車の雰囲気を感じることができます。
いよいよ乗車!
京都駅入線
始発駅である京都駅には、他の特急が発着するJR京都線用のホームではなく、嵯峨野山陰線用ホームである31番乗り場に入線してきます。
21時頃、汽笛を鳴らして「WEST EXPRESS 銀河」(以下、「銀河」とする)が入線してきました。
この日は嵯峨野線のダイヤが乱れており、先発の特急がまだ来ていない状態でしたが、運転順序が変更されて「銀河」が先に入線する形となりました。
ダイヤ乱れの影響で混雑する32番乗り場を横目に、優雅な銀河は折り返しの準備を進めます。
偶然にも隣に止まっている車両は、「銀河」の117系と同じように新快速用として製造された221系車両で、どちらも現在は世代交代をしているものの、片方は観光特急、片方は京都・奈良地区の普通・快速列車として活躍しています。
先頭側へ移動してきました。
暗い駅に溶け込む瑠璃紺色の車体と、オシャレに銀河と書かれたヘッドマークと、国鉄型とは思えない眩しいLEDの前照灯がとてもかっこいいです。
車体側面に描かれた銀河のロゴは、「西日本エリアの魅力的な地域を星に見立て、その星々の間を列車が移動する様子を曲線でデザインすることで、「WEST EXPRESS 銀河」が魅力的な地域とお客様を結ぶ列車であることを表現している」とのことです。
まずは座席へ
今回私が取れたのは、2号車のクシェットタイプの座席で、こちらは一区画に上下2段の計4席が設置されており、かつての簡易寝台のように横になってくつろぐことができます。
クシェットの各座席には、枕カバーのようなもの(枕はありません)と毛布があり、個別の照明と小物入れ、AC100Vの充電用コンセントもあるため一晩過ごすには十分な設備がそろっています。
ただ、私は枕がないと寝られないタイプだったため着替えが入ったカバンを枕代わりにして寝ました。
乗車予定の方も枕がないという点は注意が必要かもしれません。
そして21時13分、列車は京都駅を発車し、終点の新宮までの約12時間の旅がスタートしました。
JR京都線は、新快速や特急が最高時速130キロで走る大動脈。
この列車は貨物線や待避線を駆使して後続の列車に線路を譲りながら、まずは大阪駅を目指します。
雨水でピントが合いませんでしたが、新快速や一部の特急列車も停車する高槻駅を高速で通過していきました。
こういった普段は体験できないことをできることも、この列車の魅力ではないかと思います。
車内を探訪
ここで一度車内の紹介を少ししたいと思います。
紀南コースの京都側先頭車となる1号車は、グリーン車指定席の「ファーストシート」です。
この1号車はグリーン券を持った人しか立ち入れない車両となっており、1号車にあるフリースペースもグリーン車の方専用の場所となります。
2号車は女性専用の「リクライニングシート」と、今回私が取れた「クシェット」の車両。
3号車の2号車寄りにはフリースペース「明星」があり、オシャレなテーブルランプのもと、ゆったりと過ごすことができます。
3号車中央は「リクライニングシート」で、2号車が暖色系だったのに対し、こちらは寒色系の座席カラーになっています。
ちなみに、リクライニングシートは一般的な特急列車よりも座席間隔が広めに取られており、リクライニング角度もより深く倒せるようになっています。
また、ヘッドレストの部分も通常より両サイドが前に出ている構造になっており、少しでも快適に寝られるように工夫されています。
3号車の4号車寄りは半個室の「ファミリーキャビン」となっており、中はマットがあり、それを畳んで座席風にしたり広げて寝転んだり、自由に過ごすことができます。
完全に個室ではないので大きな声で話すと通路を通る方に聞かれてしまいますが、中を覗くことは出来なくなっているので周りの目を気にせずゆったり過ごせる座席となっています。
ちなみに、こちらは1室3~4名の利用で、2名以下の利用はできなくなっています。
また、運転日によっては、紀南エリアに関するツアーデスクの設置、うみえるマップデスク、車内クイズ大会、ロケットガイドによる解説、曼荼羅絵解きの解説、ジオパークガイドによる解説など、さまざまなおもてなしも行われています。
私が乗車した日はツアーデスクの設置日だったので、紀南エリアの各市町村の観光パンフレットの設置や、おすすめの観光地、お土産などについて担当の方に相談することができました。
隣の5号車は「クシェット」の車両です。
また、この号車の4号車寄りは車椅子の方でも利用できる広いお手洗い、洗面台があり、一番近いクシェットの座席も車椅子対応の広い座席になっています。
そして、新宮側先頭車の6号車がグリーン個室の「プレミアルーム」で、暗証番号式のロックもできる個室の座席となっています。
座席の背もたれ部分を倒すことでベッド状にすることができ、周りの目を気にせず自由に過ごすことができます。
銀河1両につき5室しかないため、どの座席も取りづらい銀河の中で最も取るのが難しい座席ではないかと思います。
そして、新宮側の一番先頭部分がフリースペース「彗星」です。
ここは乗務員室のすぐ後ろになるため、新宮行きの場合は前面展望を楽しむことができます。
大阪駅地下ホームに到着
京都駅を発車して約1時間。「銀河」は新大阪駅、そして大阪駅に到着しました。
乗車可能な駅は大阪駅が最後となります。
ここまで貨物線を駆使しつつJR京都線を走ってきた「銀河」は、貨物線を地下化してホームを設置した大阪駅地下ホームに到着します。
特急くろしおも地下ホームを発着するとは言え、ここも実は特殊な走り方をしています。
大阪環状線を走行した「銀河」は、22時35分頃天王寺駅に停車(ドアは開かない運転停車)。
京都から乗務されていた運転士、車掌さんが交代し、ここからは阪和線を走行していきます。
夜の和歌山駅に到着
23時42分、列車は定刻で和歌山駅に到着しました。
ここでは約50分間停車し、夜食として銀河特製の「和歌山ラーメン」を食べることができます。
駅から片道約5分のところにある、「麵屋 ひしお」というお店で購入・受け取りができ、ほとんどの方が向かわれていました。
3日前までの事前予約で、和歌山の「肉そば」や鯖寿司・ゆで卵が付いた「プレミアムセット」を購入でき、当日店頭でも和歌山ラーメンを購入することができるので、私のようにキャンセルによる直前予約の場合でも食べることができます。
ラーメンを購入して和歌山駅へと戻りました。
終電が行った後のため、駅は静まり返っています。
各号車のフリースペースでは皆さんラーメンをすすっていて、4号車のフリースペースは和歌山ラーメンの香りが充満していました。
寝る前のラーメンという普段は控えることも、こういう時は気にせず食べてしまいます。
ついに消灯の時間
24時30分、列車は再び新宮駅へ向けて走り出しました。
ここで車掌からの放送があり、車内の照明が消灯されました。
消灯後は夜行列車感が増し、逆にテンションが上がってしまう雰囲気になります。
さて、ここで皆様気になるであろうことが、「寝られた」のかどうか…
結論から申し上げますと、無事寝ることはできました。
ただ、正直なところ和歌山発車後の走行中は「熟睡」とまでがいかず、駅に停車してから熟睡できた形になりました。
どうしても「銀河」に乗っているというテンションの高まりと、揺れる列車という条件が重なるとすんなり寝るのは難しい気がします。
次に私が目が覚めたのは5時過ぎでした。
深夜はずっと紀伊田辺駅に停車しており、動き出した時の揺れで目が覚めました。
先頭まで行くとさすがに誰もいなく、貸切で朝のきのくに線の前面展望を楽しむことができました。
夜明けの時
5時半過ぎ、山の向こうがかなり明るくなりはじめ、ついに朝を迎えました。
6時頃、列車は見老津駅に運転停車しました。
見老津駅は海が見える駅としても知られ、国道を挟んですぐ目の前に海が広がっています。
この駅で紀伊田辺行きの普通電車と行き違いをします。
見老津駅を発車した「銀河」は、朝の太平洋を望みながら串本駅へ向かいます。
この後車掌さんからの「おはよう放送」がありました。
ちなみに、「銀河」の車内チャイムは、かつてのブルートレインにもよく使われていた「ハイケンスのセレナーデ」というもので、国鉄の特急によく乗っていた方からすればとても懐かしい気分にさせてくれるチャイムかと思います。
串本駅に到着
6時50分、「銀河」は定刻で串本駅に到着しました。
ここでは約1時間停車時間が設けられていて、臨時の観光周遊バスに乗ることで橋杭岩まで行く事ができます。(バスは往復1000円)
また、3日前までに予約した方は朝食としてマグロカツバーガーを受け取れます。
新宮へ向けて再出発
8時ちょうど、「銀河」は新宮へ向けて再び動き始めました。
串本駅を出て少しすると、車内からでも進行方向右側に橋杭岩を見ることができます。
(写真はくろしお乗車時に撮ったものです。)
古座駅を発車したあたりからは、特定日のみ実施される「熊野曼荼羅絵解きの解説」が4号車のフリースペースで行われました。
熊野地域の歴史について、絵解きの手法で解説していただけます。
明るい時間帯のフリースペースから撮る車窓の様子も味があって良いです。
8時50分頃、「銀河」は太地駅に停車したのち、一駅先の湯川駅で運転停車します。
ここでくろしお16号との行き違いを行います。
湯川駅も海がすぐ目の前にあるため、行き違い待ちで停車している時間も海を見て楽しむことができます。
紀伊勝浦駅に到着
9時5分、ついに紀伊勝浦駅までやってきました。
紀伊勝浦駅では、「まぐろのぼり」によるお出迎えがありました。
紀伊勝浦駅を発車するといよいよ終点の新宮駅まですぐそこです。
ここで、車掌さんから、乗車記念のカードをいただくことができました。
そして、新宮駅手前では最後の絶景スポットである「王子ヶ浜」を、速度を落として運転してもらえ、最後まで絶景を楽しませてもらえました。
この日はあいにくのお天気でしたが、旅の締めくくりにピッタリな大迫力の熊野灘の荒波を見ることができました。
ついに終点の新宮駅に到着!
京都駅を発車して約12時間。9時35分に定刻で終点の新宮駅に到着しました。
たくさんの方のお出迎えのもと、たくさんの方がおりていきました。
乗っているときには感じられませんでしたが、全員が同時に降りるとかなりの方が新宮駅まで乗っていたことがわかります。
さて、ここまで「WEST EXPRESS 銀河」の乗車記録を紹介しましたが、いかがだったでしょうか。
コンセプトにもなっている「魅力的な地域とお客様を結ぶ列車」であることが乗っていて随所に感じられる旅になりました。
12時間と聞くとかなり長く感じてしまいますが、実際に乗ってみると、車内を回ったり車窓を眺めたりしているうち、あっという間に時間が経過していました。
紀南コースの運行は、9月末で今年は終わってしまいますが、機会があればぜひ皆様にも乗っていただき、降車後は魅力あふれる紀南地域を観光していただければと思います。
かなり長くなってしまいましたが、最後までご覧いただきありがとうございました。
「WEST EXPRESS 銀河」に関する詳細は下記JR西日本さんの公式HPよりご確認ください。
JR西日本さんの公式HPはこちら