「WEST EXPRESS 銀河」とは
こんにちは。
「WEST EXPRESS 銀河」は、JR西日本さんが地域との連携を通じて地域を活性化する目的に2020年9月から運行が開始された観光列車です。「観光列車」というと貸切運転やツアー参加者限定のようなイメージがあるのですが、この「WEST EXPRESS 銀河」は運転日が限定されているものの一般利用者も乗車が可能で、そのきっぷは他の定期列車と同様に駅のみどりの窓口(券売機を含む)やネットなどで購入できます。しかしその人気は相当高いようで、販売開始日(1か月前)に完売となることも多いようです。
運行区間は、当初の発表によると関西~山陰方面、関西~山陽方面とされていましたが、その後関西~紀南エリア(和歌山県南部)が追加されています。
コース(運転区間)は季節ごとに割り当てられるようで、今年の紀南エリアへは7月~9月の間で週2往復、京都~新宮(和歌山県)間の運転で、このうち下り(新宮行き)は夜行列車として設定されています。
以前から乗ってみたいと思っていたこの「WEST EXPRESS 銀河」のですが、今回、帰省の折に乗車機会を得ることができましたのでその様子をお伝えしたいと思います。なお、今回入手できたチケットは紀南エリアへの運転の最終日のもので、今後の紀南エリアへの運転は未定です。この先、ブログを読まれる方はこのことをご了承のうえお読みください。
「WEST EXPRESS 銀河」の車両の紹介
「WEST EXPRESS 銀河」の車両は6両編成で2018年頃に改造により生まれました。この車両、元は新快速用に1974(昭和54年)に国鉄によって製造されたもので、関西圏の方は乗車されたことも多いのではないでしょうか。下の写真は昭和62年7月のものです。(高槻~山崎間)
新旧並べてみると「顔」の部分がよく似ていることが分かります。側面は用途の変更により大きく変わっていますが、通勤電車用の幅の広い扉などに当時の姿を垣間見ることができます。
1号車-グリーン車指定席
紀南コースでは京都寄りの先頭車で、1つのボックスに向かい合う2席が配置されています。背もたれを倒すとベッド状になり寝転ぶこともできます。
先頭部分には2人×2のラウンジがありますが、利用には1号車のグリーン車指定席券が必要です。
2号車-普通車指定席(一部女性席)
2人掛けの座席と「クシェット」と呼ばれるノピノピ座席がおよそ半数ずつ設置されています。座席はグリーン車並みに大きくてピッチも広くゆったりしています。「クシェット」は昔の二段式B寝台車に似た配置で、一つの区画に二段ベッドが2列並んでいます。夜行運転時は横になれるのでありがたい設備ですね。但し、寝台列車のようにベッドをカーテンで完全に覆うことはできず、下段はレースのカーテンで半分強を覆うことができます。上段はカーテンそのものがありません。
なお、2号車の座席部分は女性専用席となっており、女性専用の更衣室やトイレも備わっているので安心です。
「クシェット」の写真は5号車のものをご覧ください。
3号車-普通車指定席
2号車同様の普通座席のほか、3~4名用の半個室が2室設置されています。出入り口横には「明星」という名前が付けられたフリースペースが設置されています。
半個室の様子。ベンチシートはマットレスのように広げることができ、寝転ぶこともできます。
フリースペース「明星」。木のテーブルを囲んで6台のイスが並んでいます。
4号車-フリースペース
4号車は全てがフリースペースとなっており、「遊星」という名前が付けられています。
下り列車には紀南エリアを紹介するパンフレットコーナーもありました。
5号車-普通車指定席
5号車は全てが「クシェット」で2段×2列の区画が4区画設置されているほか、出入り口付近には車いす対応の座席(ベッド)が2台あります。
車いす対応座席(ベッド)。ベッド2台分の区画をレースのカーテンで覆うことができますが完全に遮光することはできません。
この車両には車いす対応のトイレが設置されています。
ベッド側の大きな窓。クシェット上下段から景気が眺められるよう窓が拡大されています。この銀河号、編成そのものが逆向きになっていましたが、ベッド側から海がよく見えるようにとの配慮なのでしょうか。
6号車-グリーン個室
新宮寄りの先頭車両で1~3名用の個室が5室設置されています。個室はナンバー式のルームキーで施錠ができ、完全な個室として利用できます。(他の車両は間仕切りやカーテンなどはあるものの完全な「個室」ではない)
最前部は「彗星」と名付けられたフリースペースとなっており、前面の窓から運転室越しに過ぎ行く景色を眺めることができます。
窓の上段は開閉可能で、開くと心地よい風が入ってきます。
その他の設備
洗面所・トイレは3号車以外に備え付けられており、洗面所はカーテンで仕切ることができます。アメニティには「KUMANO NO KAORI」(熊野の香り)と書かれており、こんなところにも「おもてなし」の心を感じます。
全車両でフリーWi-Fiが利用できるほか、4号車にはAEDが設置されています。
運行ダイヤ(下り夜行列車)
天王寺~新宮間には過去に「はやたま」と名付けられた夜行の普通列車が毎日走っていました。昭和58(1983)年のダイヤでは天王寺を23時00分に出発し、途中和歌山で12分停車の後0時06分に発車、新宮には翌朝5時07分に着くダイヤでした。寝台車はここで切り離され、一部の車両は三重県の亀山まで通して運転されていました。金曜日の夜に乗ると、ほろ酔い気分の通勤客と夜釣りの客でごった返していましたが、通勤客は海南まで、釣り客も周参見(すさみ)あたりまでの乗車で、その先はガラガラだったと記憶しています。当時のダイヤをPDFで貼り付けていますので興味のある方はご覧ください。(日本交通公社(JTB)1983年4月号時刻表より)
「はやたま」の時刻を見る(PDF)
ここから今回の乗車記
さて、前置きが長くなってしまいましたが、ここからは今回乗車した下り夜行列車の様子を簡単に紹介していきたいと思います。
銀河号が京都駅に入線!
京都駅始発の特急「くろしお」は通常6、7番線から発車しますが、今回乗車するWEST EXPRESS 銀河(以下、「銀河」と略記)は山陰線(嵯峨野線)用の31番線から発車します。
よく見ると銀河の「河」に★のマークが付いています!
20時53分、31番ホームに銀河がひっそりとやってきました。暗黒色の車体にライトが光ります。
京都駅で出発を待つ銀河号。旅への期待が膨らみます。
車体に描かれた「銀河」のロゴ。車内の暖色系のランプが夜行列車の雰囲気を醸しています。
反対側にはキティちゃんが描かれた電車が止まっていました。なんとも賑やかなイラストですね。よく見ると車内や枕カバーにも描かれています。
今回乗車するのは5号車。「クシェット」のベッドのロゴが描かれています。
通路部分は昔のB寝台車のような感じですが、木が多く使われ温かみを感じます。
指定されたのは3番B席、クシェットの下段です。ネットでクシェットを予約しようとすると「上段」「下段」の表記がありませんが、アルファベットAとBが下段、CとDが上段です。
下段座席(ベッド)様子。昔のB寝台よりも下段のベッドが床に近い位置に配置されているため上下空間の窮屈さはあまり感じませんでした。上段へのハシゴはB寝台では窓側にありましたが、銀河では手前側に付いています。レースのカーテンが見えますが、ベッド部分を完全に覆うことはできません。
上段の様子。下段にあるレースのカーテンは上段にはありませんが、横になった時に顔にあたる部分に半透明の板が設置されているため、向かい側の人と目を合わさずにすみます。
ベッドには枕カバー(枕は無い)と薄いブランケットが用意されていました。夜行運転時だけのサービスなのでしょうか。壁面には照明と小物入れ、100Ⅴコンセントがついています。
21時15分 新宮に向けて出発!
列車は山陰線乗り場にいるたくさんの人に見送られながら定刻に京都を出発しました。
京都~新大阪間は通常の特急では24分ほどの所要ですが、銀河は時刻表上では55分をかけています。ゆっくり走るのではなく、途中何度か駅に停車(ドアは開かない)して普通電車などに道を譲りながら新大阪に着きました。違和感ありまくりのこの列車、駅の停車中や通過時に老若男女問わず多くの方々がスマホを向けていました。
新大阪、大阪からもたくさんの人が乗車し、列車はほぼ満席になりました。
和歌山駅で約1時間の停車
列車は京都を出ておよそ2時間半、23時42分に和歌山に着きました。ここではおよそ1時間の停車時間があり、この時間を使ってコンビニなどで買い物ができます。また、3日前までの予約制ですが、夜食として特製の冷やし和歌山ラーメンも楽しめます。(持ち帰り容器により車内で食べることも可能)
今回は家でカレーライスを食べてきたのでラーメンはパスしましたが、4号車のフリースペースではたくさんの人たちがラーメンをすすっていました。
静まり返った深夜の和歌山駅に停車中の銀河号
ひっそりと深夜の和歌山駅を出発
列車は約1時間和歌山駅に停車後、再び新宮に向けて走り出しました。夜間走行のためここからは車内が減灯され、さらに夜行列車らしい雰囲気に包まれました。
夜が明けて
明朝6時頃、カーテンを開けて明るくなった外を見てみると、見老津(みろず)駅に停車していました。京都からの距離は約250kmです。白浜駅も通っていたはずですが、心地良い眠りで全く気づきませんでした。
20分ほどすると上りの一番電車がやってきて、そしてしばらくすると銀河もゆっくりと動き出しました。夜は雨が降っていたようで路面は濡れていますが海の上には青空も見えます。
先頭のフリースペース「彗星」に移動してから前の景色を見てみようと思います。フリースペースは6号車の個室に挟まれた通路の奥にあります。
先頭からの風景。誰もいないホームを通過していきます。
海岸の景色が流れていきます。心地よい風が車内に入ってきます。
朝の串本駅に到着
列車は6時50分、定刻で串本駅に着きました。ここでは8時00分の発車まで1時間10分停車します。
停車中は和歌山駅同様に駅員さんにきっぷを提示すると途中下車できます。
駅前からは観光スポット「橋杭岩」(はしくいいわ)まで往復する臨時バス(有料)が出ており、停車時間中に観光することもできます。また、3日前までの予約制ですが、朝食の特製弁当も購入することができます。
ホームの反対側には新宮行きの普通列車がやってきました。これを使うと新宮には1時間半ほど早く着くことができますが、せっかくの機会なのでこのまま銀河に乗車して新宮まで行くことにします。
特急銀河を横目に、普通列車が先に出発していきました。
この電車、よく見ると「普通」の表示の横に自転車のマークが描かれています。そう、きのくに線の列車の一部には自転車の持ち込みが可能な列車があるんです!(詳細はJR西日本さんのHPに紹介されています)
普通列車が去って行った後のホームに、ゆっくりと時間だけが流れていきます…
新宮を目指し再び出発!
列車は定刻の8時に列車は再び新宮に向けて出発しました。出発後しばらくして車窓から橋杭岩が見えました!
4号車フリースペースでは語り部による熊野曼荼羅(くまのまんだら)絵解き解説が行われます(特定日のみ)。熊野信仰についての知識を深めた上で熊野三山を訪れるといろいろなことが見えてきます。
紀伊勝浦駅では、まぐろのぼりを持った方々が列車を出迎えてくれました。地域の皆さんの銀河に対する熱い思いが感じられます。
休暇村南紀勝浦の最寄り駅、宇久井(うくい)駅を列車はゆっくりと通過していきます。
新宮駅手前にある最後の絶景スポット、「王子ヶ浜」の眺めです。列車はぎりぎりまで速度を落とし、最後の景色を楽しませてくれました。
そして列車は定刻の9時37分、終点の新宮に到着しました。京都から315.5km、12時間22分をかけての列車の旅でした。ホームでは地元の園児や観光関係の方々が迎えてくれました。
乗客を降ろした下り最終の銀河号は、たくさんの園児たちに旗を振られながら車庫に向かっていきました。(画像は一部加工しています)
さて、「WEST EXPRESS 銀河」の乗車記を簡単に紹介させていただきましたが、いかがでしたでしょうか。列車のコンセプトに掲げられている「地域との連携」や「おもてなし」を車内・外で実感したとともに、沿線の観光に携わる方々からの列車に対する想いを感じました。今回は、下り夜行列車としての最終日に乗車することができ、新宮到着の翌日には上り昼行列車としての最終運転としてたくさんの方々に見送られながら列車は京都に帰っていきました。その様子は地元新聞「熊野新聞」「紀南新聞」の第一面に大きく報じられ、その記事によると今季の乗車率は95%だったそうですが、実際に乗ってみるとその数字にも頷けました。
次期は10月~2025年3月の間、山陽方面への運転が発表されていますが、またいつか、銀河が紀南エリアへやってくることを願ってやみません。
「WEST EXPRESS 銀河」の詳細はJR西日本さんのおでかけネットに紹介されていますのでそちらをご覧ください。
JR西日本さんの「WEST EXPRESS 銀河」の紹介ペー
紀南エリアでのご宿泊は
紀南エリアへお越しの際は、ぜひ休暇村南紀勝浦にご宿泊ください。
休暇村南紀勝浦のHPはコチラ