ブログ

2017.10.17

近代日本の門戸を開いた下田の歴史を見つけに ~玉泉寺~

4,753 view

スタッフ名:江森

画像1
画像2
 開国の町として知られる下田の町に、時代に翻弄され数奇な運命を辿ったひとつのお寺があります。
このお寺を舞台に数々の伝説と逸話が残されているにも関わらず、なぜかその名を知る人が少ないお寺こそ、下田湾を見下ろす高台に立つ曹洞宗瑞龍山 『玉泉寺』です。
 下田の町に、日本で初めて米国総領事館が置かれ、近代日本の幕開けの舞台となった歴史あるお寺であり、世界的権威であるグリーン・ミシュランこと「ギド・ヴェール」にて、二ツ星に輝いているお寺でもあります。
 そんな玉泉寺と、その境内に建つハリス記念館では、近代日本の開国の歴史を学ぶことができ、実に興味深いお寺となっています。

 
画像1
 江戸から明治へと移りゆく開国の舞台となったこの玉泉寺は、下田の中心地から御用邸がある須崎方面へ、国道135号線を折れてすぐ左手の下田湾を見下ろす高台に位置しています。
近くには、ハリスの散歩コースだったとされる「ハリスの小径」や、吉田松陰が踏海の企てを行ったとされる「弁天島」などがあります。
 天正以前は真言宗の草庵であったのを、天正の初めに開山一嶺俊栄和尚の来錫によって曹洞宗に改宗されてから現在まで400年の歴史を有するお寺です。
 そんな長い歴史を持つ玉泉寺を知る上で、重要なのがこの本堂に初代米国総領事館が開設されたことです。
 この玉泉寺が米国総領事館を置く場所に選ばれた理由のひとつには、下田湾が一望でき出入りする船が一目で分かるという立地条件があったといわれています。

 1854年に「日米和親条約」が締結されると、下田港が開港され、異国からの船の出入りが始まりました。
その2ヵ月後には、付録下田条約が結ばれ、この玉泉寺が了仙寺とともにアメリカ人の休息所となり、日本で初めての「外人墓地」にも指定されました。
 そこに1856年、米国総領事として「タウンゼント・ハリス」と、オランダ人通訳の「ヒュースケン」という人物が、中国人の召使とともにサンジャシント号に乗って下田に来航しました。
着任にあたっては、幕府との行き違いなどがあり多少手間取ったものの、9月3日玉泉寺に米国総領事館が開設され、ハリス以下10人が滞在することになりました。
 その翌日には、
 「・・・旗棹が立った。水兵たちがそれを廻って輪形をつくる。そしてこの日の午後2時半に、この帝国におけるこれまでの『最初の領事旗』を私は掲揚する。厳粛な反省一変化の前兆一疑いもなく新しい時代がはじまる。敢て問う、真の日本の幸福になるだろうか?」 
 という有名なハリスの日記の一文に象徴されるように、庭先に高々と星条旗が掲げられ日本の開国への扉が開かれました。
 それから2年10ヶ月の間、玉泉寺は米国総領事館として開国への石杖を築く場となり、幕末の歴史の表舞台に登場することになりました。


 
画像1
 玉泉寺の門をくぐりお堂とともに真っ先に目に飛び込んでくるのがお堂横の牛の絵が描かれた石碑です。
 この石碑は「牛乳の碑」と言われ、伊豆で創業した森永乳業により建てられたものです。
 その昔、総領事として滞在中のハリスが、病床時に牛乳を欲した際に、15日間飲んだ牛乳の対価として1両3分を与えたことから、日本で初めて牛乳売買が行われた地として建てられた石碑となっています。
 
画像1
画像2
 門をくぐったすぐ右手には、”ハリスの石碑”が建っています。
 このハリスの石碑は、この地に米国総領事館を開き、日本の門戸を世界に開いたハリスの功績を称えるとともに、ハリスの日記の一文などが彫り込まれています。
 そんなハリスに関しては、お堂の右手にハリス記念館が建っており、領事館時代にハリスが愛用した品々や領事館に纏わる古文書、日本最古の銀板写真などが展示されています。
 本堂の北側にある墓地の一角には、日本最初の外人墓地であるアメリカのペリー艦隊の乗員5名のお墓があります。
 また、本堂を挟んで南側にあるハリス記念館の奥には、ロシアのプチャーチン提督が乗船し、安政東海地震による津波で大破し、後に戸田沖で沈没したディアナ号の乗員3名と、アスコルド号の乗員1名の墓地もあります。
 
画像1
 1979年6月27日には、第39代アメリカ合衆国大統領であったジミー・カーター氏と、ロザリン・カーター夫人、エミー・カーター嬢が、下田で行われるタウンミーティングの際にこの玉泉寺を訪れ、ペリー艦隊の将兵墓地をお参りされました。
 大統領が来る1ヶ月前から、境内のみならず裏山には警備用の鉄線やサーチライトが設置され、夜も煌々と明るく照らされたといわれています。
 また、大統領が訪問する前日には、ホワイトハウスとの直通電話がお堂の前に引かれ、多くの警備員に取り囲まれ、お寺のイメージとは程遠い物々しい雰囲気だったそうです。
 1991年には、天皇・皇后両陛下も行幸されています。
 
*基本情報

☆玉泉寺
  ◆参拝時間:午前8時から午後5時まで
          ※年中無休

☆ハリス記念館
 ◆入場料:大人400円
      小人(小学生)200円

 ◆入場時間:午前8時30分から午後5時まで
         ※年中無休
 

スタッフ

Staff blog

Archive

2025年(193)
2024年(361)
2023年(356)
2022年(364)
2021年(369)
2020年(339)
2019年(364)
2018年(362)
2017年(192)
PAGE TOP