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旅行記

2025.05.23

死ぬまでに行きたい!到達困難な日本の絶景~青ヶ島~

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スタッフ名:大籠

青ヶ島を知ったのは、「人口が少ない村ランキング」を見ていたときのことでした。
以前、私も配属されたことのある休暇村茶臼山高原がある愛知県の豊根村も、人口が1,000人を切る小さな村で、「他にどんな場所があるんだろう?」と気になって調べてみたのがきっかけでした。
そこで見つけたのが、日本一人口が少ない村――東京都・青ヶ島村。
調べていくうちに、「死ぬまでに行きたい絶景」として紹介されているブログや特集記事も多く、写真からもその独特な雰囲気が伝わってきました。
特に目を引いたのは、火山が生んだダイナミックな二重カルデラの地形と、不思議な景観。まるで別世界のようでした。
東京都でありながらアクセスが難しいという点も印象的で、「そんな場所で、人々はどんな暮らしをしているんだろう?」と、ますます興味がわいたのを覚えています。

火山が生んだ奇跡の島:青ヶ島の地形と歴史

青ヶ島は、外輪山と内輪山が重なる「二重カルデラ」という世界的にも珍しい地形を持つ火山島です。この地形は、過去の火山活動により形成されました。特に、1785年の天明の大噴火により、島の中央に新たな火口丘(現在の丸山)が形成され、現在の二重カルデラ構造が完成しました。
この大噴火では、島民の多くが死亡し、生存者は八丈島へ避難しました。その後、約50年の無人期間を経て、1817年に島民が青ヶ島へ戻り始め、1824年には再定住が完了しました。この帰還は「還住」と呼ばれ、現在も島の文化として受け継がれています。
イメージとしてこんな感じでできた様です。綺麗に中心から2度噴火しており、まさに奇跡的なでき方です。

まずは八丈島へ。そしてその先が本番

青ヶ島へのアクセス方法を調べてまずわかったのは、直接は行けないということ。
まずは八丈島まで行く必要があります。八丈島へは、東京・羽田空港から飛行機で行くか、竹芝桟橋からフェリーに乗って行くかの二択。飛行機なら所要時間は約55分、フェリーは約10時間半。時間と予算、そして「旅気分」をどう楽しむかで、選び方も変わりそうです。
そしてここからが、青ヶ島への本番ルート。八丈島から青ヶ島までは“船”または“ヘリコプター”での移動になりますが、どちらもなかなかの難易度です。まず船は、年間を通して約半分が欠航。天候や海の状況に大きく左右されるため、運行はまさに運次第。「それならヘリコプターで!」と思いきや、こちらも一筋縄ではいきません。ヘリは就航率こそ約80%と安定していますが、定員は1日わずか9名。しかも、予約は基本的に電話のみ。これがとにかく大変で、私は往復のヘリ便を確保するのに、合計500回以上も電話をかけました。しかも片道ずつ別々に予約しなければならず、往路と復路の両方で電話合戦を勝ち抜く必要があります。
幸い昨年は予約自体は取れたものの、当日は大雨の影響で羽田から八丈島行きの便が欠航。青ヶ島どころか、八丈島にすらたどり着けませんでした。
まさに、「行けるかどうかは天候とタイミング次第」というのが青ヶ島旅のリアル。でも、このアクセスの難しさこそが、この島の特別感をより強く感じさせてくれるのかもしれません。
左の写真は八丈島にある二つの大きな山のひとつ「八丈富士」からの眺め。
八丈島自体がもともと雨の日が多いそう。青ヶ島の天気が良くても八丈島の天気が悪いと、都内から向かうことすらできません。
ちなみに今回私は・・・
往復ともにフェリーで行きました。昨年度の経験から、万が一欠航しても保険として翌朝飛行機で行
人生初めてのヘリ。往復ともに約1時間リダイアルをし続けて、無事搭乗。

島に到着!まずは青ヶ島の第一印象

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青ヶ島に上陸してまず思ったのは、「やっと来た!」という一言に尽きます。
なかなか予定が合わなかったこと、そして昨年は直前で断念せざるを得なかった悔しさ――そんな思いが一気に晴れて、喜びがこみ上げてきました。何より印象的だったのが、360度海に囲まれた“秘境”という言葉がぴったりの景色。空も海も果てしなく広がっていて、島の小ささがむしろその特別感を引き立ててくれます。着いた瞬間から、心が躍るのを感じました。
今回は2日間の滞在予定だったので、「このあと何をしよう?」というワクワクが止まりません。事前に「ここでしか見られない」「ここでしかできない」体験をいろいろ調べていたこともあり、青ヶ島の空気、景色、そして“非日常感”に胸が高鳴るばかりでした。

青ヶ島の見どころ「自然と暮らしが調和する絶景の島」

青ヶ島の魅力はなんといっても、360度を海に囲まれた“絶海の孤島”という唯一無二のロケーション。島に降り立ったときから感じるそのスケール感は、写真や映像では伝わりきらない、圧倒的な存在感を放っています。
まず向かったのは、島の最高地点「大凸部(おおとんぶ)」。ここからの眺めは、まさに絶景。視界いっぱいに広がる海を見ていると、地球の丸さすら感じられるようで、自然の雄大さに心が洗われるような気持ちになりました。
同時に、“人間ってちっぽけだな”と感じるような孤独感もあり、個人的にはとても印象に残った場所です。
一方で、島の中央に目を向けると現れるのが「丸山」。島の中心部にボコッと凹んだこの地形は、緑に包まれてこんもりとした形をしており、まるでふわふわのプリンのよう。実際に、島の子どもたちの間でも「プリン」と呼ばれているそうです。そんな親しみのある呼び名からも、島の暮らしと自然との距離の近さが伝わってきます。
大凸部(おおとんぶ)からの景色。
曇り空でも広がる絶景に、青ヶ島らしさを感じます。見ていると、心がすっと空っぽになるようでした。
島唯一の牧場「ジョウマン共同牧場」
潮風の中、のんびり草を食む牛たち。ときおりこちらを見つめながら、また静かにくつろぐ姿に癒やされます。夜は星空も格別です。
自然のあたたかさで蒸す、青ヶ島の地熱窯「ひんぎゃ」
地熱蒸気が立ちのぼる「ひんぎゃ」。重なる地層が火山の島を物語ります。
誰でも使うことができる「ひんぎゃの地熱窯」。私は民宿からお昼ご飯としてもらった食材を蒸していただきました。
島内のいたる所に自生する「オオタニワタリ」と「アシタバ」
オオタニワタリは青ヶ島特産焼酎「あおちゅう」でも使用される島民に馴染み深い植物。島外から来た私は観葉植物にしか見えません。
アシタバも伊豆諸島周辺ではよく見かけます。八丈島・青ヶ島の滞在で、アシタバを食べなかった日はありませんでした。
島の暮らしを支える大切な港「三宝港」
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今回は利用しませんでしたが、港もこの島ならではの独特な景色を見せてくれます。
桟橋は島の外輪のさらに外に位置しており、まさに天然の要塞のよう。
島肌は風や波を直接受けるため、あちこちがむき出しになっています。
私が訪れた日は天気もよく、波も穏やかで、釣りを楽しむ人の姿も見られました。
一方で、太平洋のど真ん中に浮かぶ青ヶ島の周囲はすぐ深海となっており、防波堤を設けることができません。
そのため、海が荒れる日には10メートルもの波が押し寄せることもあり、船はクレーンで吊り上げて陸上で保管されます。
ヘリコプターと並ぶ、島の暮らしを支える大切な玄関口です。
船を陸に上げるためのクレーン。運が良ければ陸に船が戻される姿をみることもできるようです。
どこまでも広がる真っ直ぐな海。波が穏やかな日は釣りや漁ができる一方、防波堤のない青ヶ島にとっては大きな波が押し寄せてきます。

幻の焼酎「あおちゅう」で島の文化を味わう

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青ヶ島の文化に触れるうえで欠かせないのが、島の名物焼酎「あおちゅう」。
サツマイモや麦を原料に、島内の限られた蔵元が昔ながらの製法で手づくりするこの焼酎は、まさに島の宝のような存在です。どっしりとした香ばしさ、まろやかなコク、なかにはフルーティーな香りが立つものもあり、造り手によって味わいが異なるのも大きな魅力。製造工程のほとんどが手作業で行われているため大量生産はできず、流通量もごくわずか。まさに“幻の焼酎”と呼ばれる理由がそこにあります。青ヶ島を訪れたなら、ぜひ現地で味わいたい一杯。島の風土と人のぬくもりを感じられる、特別な一品です。
あおちゅうの酒造場を訪問。運よくお話を伺え、多彩なあおちゅうを試飲。種類ごとに注がれ、すっかり酔いが回りました。

島内唯一の居酒屋で、60度の幻の焼酎「初垂れ」を体験。酒税法の特例で製造され氷で白く濁るのが特徴です。島外へ持ち出しはできません。45度を超える焼酎を飲むことができるのは青ヶ島と鹿児島県・伊佐市のみ。

忘れられない3日間を終えて

青ヶ島で過ごした3日間は、これまでのどの旅とも違う、まさに“非日常”の時間でした。
予約の段階から始まるアクセスの難しさすら、この島の魅力をより特別なものにしていると感じます。
360度に広がる海、二重カルデラの壮大な景観、地熱の恵み、そしてその中で営まれる人々の暮らし――。
限られた時間のなかで出会った景色や体験は、きっと私の中で、決して忘れることのない大切な記憶になると思います。
訪れるには時間も運も必要ですが、その先には「来てよかった」と心から思える瞬間が待っていました。
もしまた、青ヶ島を訪れることができたなら――。
あの景色が、今度はどんなふうに迎えてくれるのか。それもまた、次の旅の楽しみのひとつです。
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